競馬の血統を見る時に度々クロスという言葉を目にすると思います。
クロス血統というのはインブリードとも呼ばれており、日本語で言えば近親交配のことを指します。
あえて同じ系統を持つ馬同士の種付けすることで、特定の血統を濃くする目的があります。ブラッドスポーツと呼ばれている競馬では、このように血統から配合を考えることは基本中の基本。
上手く行けば驚くべき能力を持ち合わせた競走馬が誕生する可能性があります。しかし、これだけ聞いてもまだ疑問が多くある方がほとんどでしょう。
そこで、この記事ではクロス血統について詳しく解説していきたいと思います。クロス配合の血統を持つ名馬も合わせてご紹介していくので、是非最後までチェックしてみて下さいね。
目次
血統のクロスについて
血統におけるクロスとはインブリードの類義語であり、近親交配のことを指します。逆にクロス配合ない場合をアウトブリードと言います。
例えば、種牡馬の先祖を遡るとノーザンダンサーがいたとします。同じく繁殖牝馬にもノーザンダンサーが入る場合はノーザンダンサーのクロス配合となり、ノーザンダンサーの血が濃くなるのです。
どの世代にノーザンダンサーがいるのかも重要となり、世代によって血の濃さが変わって行くのです。血統表を見る時には、このクロスの確認や系統のチェックを行うことがほとんどですね。
以下では、インブリードについてさらに詳しくご紹介していきたいと思います。
系統の血を濃くすることが最大の目的
クロス配合の最大の目的は、特定の血統の血を濃くすることです。また、基本的には牡馬、つまり種牡馬の血を濃くしその馬が持つ遺伝能力を高めることで、より強い競走馬を誕生させようとしているのです。
人間では両親の特徴をどちらも均等に受け継ぐことが多いですが、馬の場合主に父の影響を大きく受けます。その為、クロス配合で意識するのも種牡馬になります。
しかし、この配合が確実に良い!という明確なものはほぼなく、馬主の方々も強い馬が生まれる確率をどうにかして上げているという状況ですね。
また、インブリードの方が絶対にアウトブリードよりも強い競走馬が生まれるという訳ではありません。アウトブリードでも名馬と呼ばれる競走馬はおり、代表的なアウトブリードの競走馬としてはディープインパクトがいます。
インブリードの方が強い競走馬が生まれる確率は高いかもしれませんが、いきなり超大物が生まれるのはアウトブリードの方が多いようにも感じます。
身体が弱い馬が生まれる可能性も高い
インブリードはメリットだけではありません。特定の馬の血量を濃くしてしまうと、体質が弱くなることが多くあります。競走馬は激しい調教、体力を大幅に削れらるレース、それらをこなした上で実力を発揮出来た馬だけが生き残ることが出来ます。
身体の強さも才能の一つであり、どれだけ能力が高くても身体が弱いと競走馬として活躍することは難しいでしょう。
また、クロス配合によって生まれた競走馬は、種牡馬になった時に種付けをする繁殖牝馬が限られてしまうので、一大系統を築き上げることは非常に難しいとされています。
ディープインパクトが種牡馬として大成出来たのは、アウトブリードだったということも大きな要因の一つでしょう。
最適な血量は18.75%
クロス配合を行う時は、血を濃くすれば良いという訳ではありません。適度な配合が重要であり、最適な血量は18.75%だと言われています。
これは奇跡の血量とも呼ばれており、奇跡の血量を持つ名馬も多く存在しています。
では、どのようにして血量を計算するのかをご紹介していきます。
上記の画像は奇跡の血量を持つ名馬の1頭、ブエナビスタの血統表になります。ブエナビスタと言えばG1レースを7勝している伝説の馬と言っても過言ではないですよね。
このブエナビスタはニジンスキーの血量が18.75%となっています。まずは種牡馬の血統から見ていきましょう。
種牡馬の世代を辿っていくと4代目にニジンスキーがいることが分かりますよね。4代目の場合は、血量は6.25%となります。
次は繫殖牝馬のビワハイジの血統を見ていきましょう。そうすると、3代目にニジンスキーがいます。3代目の場合は血量は12.5%となります。
種牡馬の血統と繫殖牝馬の血統を合わせるとニジンスキーの血量が18.75%になるという訳です。
このクロス配合は世代の数字を取って3×4クロスとも表記されます。また、種牡馬と繫殖牝馬の世代が逆の4×3でも同じです。奇跡の血量の馬を探したい時には、種牡馬側と繫殖牝馬側のどちらでも良いので、3代目と4代目に同じ馬がいることが条件になります。
インブリード配合によって生まれた名馬を紹介
上記ではブエナビスタを例に挙げて奇跡の血量をご紹介しましたが、他にもクロス配合によって誕生した名馬が多く存在しているので、ご紹介していきたいと思います。
オルフェーブル
ステイゴールド産駒でG1レース7勝、クラシック三冠を達成したオルフェーブルも奇跡の血量を持つ名馬です。4×3のノーザンテーストのクロス配合となっており、他のクロスはありません。
全兄にドリームジャーニーがおり、優秀な配合だという事が分かりますよね。し菓子、実はその後もステイゴールドとオリエンタルアートは何度も種付けがされていますが、オルフェーブルを超えるような競走馬が誕生しませんでした。
2015年にステイゴールドが亡くなってしまったので、この配合はもう実現しませんが、現在ではオルフェーブルが種牡馬として活躍しているので、血統は受け継がれています。
ヴィクトワールピサ
続いてご紹介するのはヴィクトワールピサです。ネオユニヴァース産駒で、ヘイローの3×4クロス配合ですね。オルフェーブルやブエナビスタとも対決したことがあり、有馬記念を含むG1レース3勝を挙げています。
2010年には三歳の時に凱旋門賞に挑戦しており、日本馬初の凱旋門賞勝利を夢見た人も多いのではないでしょうか?
引退後は種牡馬としても活躍しており、スカーレットカラーやブレイキングドーンなど、ヴィクトワールピサ産駒は現在もレースで大暴れしています。
エルコンドルパサー
最後にご紹介するのはエルコンドルパサーです。アメリカ生まれなので、血統表には聞きなれない競走馬が多いかもしれませんね。
5代目までに4つのクロスが生じており、ノーザンダンサーは18.75%となっていますが、スペシャル、リサデルは25.0%、ネイティブダンサーは9.38%となっています。
様々な系統が混ざっており、インブリードの名馬の中でも少し特殊ですね。それでも、現役時代は11戦8勝でG1レース3勝と圧巻の成績を残しています。
引退後は種牡馬として活躍しており、代表産駒にはヴァーミリアン、トウカイトリック、サクラオリオンなどがいます。
まとめ
今回の記事では、競馬の血統のクロス(インブリード)について詳しくご紹介させていただきました。
強い競走馬を作る為に血を濃くすることを目的として配合されているのがインブリードです。能力的に強い競走馬が生まれる確率は高くなりますが、身体が弱くなる傾向があったり、種牡馬として使いづらいこともあるというデメリットもあります。
また、アウトブリードでも強い競走馬は誕生しているので、必ずしもインブリードが良いという訳ではありません。
しかし、有力がインブリードなのか、奇跡の血量を持っているのか、それともアウトブリードなのか。これらを見るだけでも競馬が一層面白く感じるのではないでしょうか?